全国保育団体連絡会

短時間勤務保育士にかかわる規制緩和に反対します

短時間勤務保育士にかかわる規制緩和に反対します
処遇改善と基準引き上げで保育士不足を根本から解決し
子どもも保護者も職員も安心できる保育条件を

 政府は、2020年12月に新たな待機児童対策として「新子育て安心プラン」(以下 新プラン)を策定しました。新プランは、2021~2024年度までの4年間で14万人分の保育の受け皿整備をめざす、としています。しかし、そのための具体的な手立てが乏しく、特に保育士の確保策として提案された保育士配置に関する規制緩和には大きな問題があります。

 新プランでは、「魅力向上を通じた保育士の確保」として、潜在保育士の再就職促進の観点から、保育士配置に関する規制緩和を提案しました。具体的には、待機児童が存在する自治体については、各組・グループに常勤保育士1名以上の配置が必須とする規制を、2名の短時間勤務(パート)保育士に代えることができる、とする内容です。

 そもそも、最低基準で規定される保育士は、常勤の保育士が原則でした。保育士の処遇改善が進まず、常勤者の確保が難しくなる中で、1998年に常勤保育士に代えて短時間勤務保育士を配置することを認める規制緩和が導入されました。その場合でも、「常勤保育士が8割以上・各組やグループで常勤保育士を1名以上配置」が要件でしたが、2002年、各組・グループに1名以上常勤保育士を配置すれば、最低基準で規定する保育士として短時間勤務保育士を充てても差し支えない、と変更されました。今回の提案は、この短時間勤務保育士配置の要件をさらに緩和するものです。

 保育の長時間化がすすむ一方で、職員の配置に関わる最低基準の改善が進まず、保育所の運営には、短時間勤務のパート保育士が欠かせない現実があります。だからといって、今回の担任全てをパート保育士に置き換えてもよしとしてしまう規制緩和は問題です。子どもが一日の大半を過ごす保育所で、保育士が次々と入れ替わるようなこま切れ保育では、パート保育士・常勤保育士ともに、負担が増え、保育の質低下は免れません。何よりも、保育の専門性を軽視するものであり、子どもも保護者も、担任すべてをパート化することは望んでいません。

 保育士不足は全国的に深刻であり、待機児童解消のためにも保育士確保が緊急の課題です。そのためには保育士不足の根本的な原因への対策が不可欠です。しかし、今回のように、保育士配置の規制緩和で対処しようとすれば、保育士不足を改善するどころか逆に深刻化させ、子どもと保育士に負担を押しつけることになりかねません。保育士不足の根本的な原因は、仕事量や責任の重さに見合った処遇が実現できていないことにあります。配置基準を引き上げるなどして、賃金を含め処遇を大幅に改善することが、保育士不足を解決する近道です。

 保育の質を確保し、待機児童を解消するうえでも、規制緩和ではなく、常勤保育士配置を基本とし保育条件を確保した認可保育所等で保育を実施できるよう、要望します。

2021年2月9日 全国保育団体連絡会

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