全国保育団体連絡会

「実地検査の規制緩和」3度目のパブコメに意見を出そう!(3/11〆切)

 「児童福祉法施行規則の一部を改正する省令案」についてのパブリックコメントの募集が、2023年2月10日~3月11日まで実施されています。
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495220382&Mode=0
 このパブコメは、保育所など児童福祉施設の設備や運営が基準を満たしているかを確かめるため、自治体に義務付けている実地検査(監査)を規制緩和しようとするもので、今回で3度目です。国は、この間の反対や疑問の声を受けとめず、なんとしても実地検査を緩和しようと固執しています。こうした国の姿勢に対し、現場から、一人ひとりの意見を国にあげていきましょう。

この間の経過

 児童福祉法施行令では、児童福祉施設(令第38条)と家庭的保育事業等(令第35条の4)について「1年に1回以上、当該職員に実地により検査させなければならない」と実地検査義務が規定されています。
 最初のパブコメ(2021.12.24~2022.1.22)では、「実地検査義務」を削除する案が示されましたが、280件の意見が寄せられ、2022年4月施行予定が2022年夏以降に延期されました。
 2度目のパブコメ(2022.8.2~8.31)では、実地検査義務削除は撤回し引き続き実地検査を原則とするものの、例外的に「実地によらない検査(非実地検査)」を認めるとし、例外的事例が示されました。この時は528件の意見が寄せられ、2022年11月1日施行予定が再度延期されました。
 今回の3度目のパブコメは、前回のパブコメにあげた例外的事例「①天災その他事例」「②検査不必要事例*」の内容を具体的に児童福祉法施行規則に定めることを中心に、施行規則の一部を改正する内容について、意見を求めています。

*例外的事例「②検査不必要事例」の詳細
「②検査不必要事例」については、「前年度の実地の検査の結果その他厚生労働省令で定める事項を勘案して実地の検査が必ずしも必要でないと認められる場合」として、その内容を厚生労働省令(児童福祉法施行規則)等で定める、としている。内容としては、以下の2点が示されている。

  • 「自治体における前年度の実地検査の実施状況」
    前年度の管内の対象施設(事業)に対する実地検査の実施率が5割以上であること
  • 「児童福祉施設等が設置(開始)してからの年数」
    施設を設置(事業を開始)してから3年を経過していること

今回の改正案の問題点

実地検査を原則とする監査を形骸化していいのか?

 「前年度の実地検査の実施率5割以上」の自治体ならば、各施設に対して4年に1回以上実地検査をすればよいことになってしまう可能性があります(例えば、検査対象が20施設のA自治体の場合、2022年度に10施設を実地検査すれば実施率は5割となり、2023年度は例外的事例②により非実地検査でよくなります。これを繰り返せば各施設4年に1回の実地検査でよくなりかねません)。これでは、年1回以上実施すべきという原則が形骸化されてしまいます。

実地検査実施率が5割以上であれば、保育事故は起きないのか?

 保育所における重大事故は、2015年度344件から毎年増加し、2021年度は1191件と約3.5倍、毎年10人程度が死亡または意識不明となっています。さらに、重大事故以外にも散歩途中での子どもの置き去り事案の多発などが報告されており、保育現場の安全確保が課題になっています。こうした事態に対し、保育現場の重大事故・安全と実地検査の実施率や内容との関係について、厚労省内で調査・分析されたことがあるのか疑問です。「実施率5割以上」で「実地の検査が必ずしも必要でない」とすることが適切であるという根拠は、何もありません。
 実際に、直近の実地検査実施率が高くても重大事故が発生している例もあります(大阪市の2019年度実地検査実施率は98%だが、2020年2月に認可保育所で死亡事故が発生しています)。 
 一方で、実地検査により不適切運営・補助金不正受給が明らかになっている事例も複数あります(2017年姫路市、2022年東京都等)。

原則の形骸化で、保育の質低下が進む!?

 コロナ禍前の2019年の保育所の実地検査実施率は全国平均で約6割です(ただし、0%というひどい状況の自治体もあります)。今回の改正によって、低い実施率がさらに低くなる恐れがあり、保育の質低下を招くことが懸念されます。厚労省は、実施率を向上させるために自治体の実施状況の公表等を行うことや、実地によらない検査の留意点としてテレビ会議や電話でのやりとり等をすることを提案するとしていますが、まったく合理的ではありません。

例外を設けても保育の質が低下しない根拠を厚労省は示すべき

 例外的事例②を適用するならば、厚労省は、保育の質が低下しない客観的根拠を示すべきです。
 厚労省は、昨年の通常国会において、実地検査の政令改正について「保育等の質の確保と両立した実効的な指導監査が可能となるよう検討する」と何度も答弁していました。本当に今回の改正案が「保育等の質の確保と両立した実効的な指導監査」というのであれば、実証的な根拠を公表するべきです。

こどもまんなか社会にふさわしいのか?

 こども家庭庁を創設し「こどもまんなか社会」を目指しているにもかかわらず、保育の質を低下させかねない実地検査の規制緩和を行うなど、言語道断であり、今回の改正は撤回させる必要があります。

意見例

子どもの命、安全を守るには、実地検査が必要です。例外を設けず、年1回以上の実地検査の原則を堅持してください。
※現場の実態、日々の保育から感じる点等、具体的な事例も加えてください。

意見応募方法

※「児童福祉法施行規則の一部を改正する省令案に関する意見」 と明記。

  1. インターネット(電子政府の総合窓口(e-Gov)の意見提出フォームを使用)
    「児童福祉法施行規則の一部を改正する省令案に関する御意見の募集について」
    画面の「意見募集 要領(提出先を含む)」を確認の上、意見入力へのボタンをクリックし、「パブリック・コメント:意見入力」より、意見を書き込み提出する。
  2. 郵送(氏名・住所、または法人名・住所を明記)
    〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2 厚生労働省「子ども家庭局 総務課企画法令係」宛て