全国保育団体連絡会

安全・安心な保育を実現するために~2020秋の運動 課題と方針

全国保育団体連絡会が事務局をつとめる「よりよい保育を!実行委員会」では、子どもの命と安全を保障できる保育を実現するために、国会に向けた請願署名を中心に運動しています。
2020年度の運動をすすめるにあたって、現在の保育をめぐる情勢と署名のポイントについて、まとめました。

Ⅰ.保育・学童保育をめぐる情勢と運動の課題

1.コロナ禍の中で、今、できることを
2020年の年明けから新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し、社会全体がコロナへの対応に追われました。子どもの命と安全を守るために不安と緊張の中で保育がすすめられ、保育運動や組合活動も停滞を余儀なくされています。全国的な集会は中止、地域での活動も縮小せざるを得ない状況が続いています。

しかし、コロナ禍だからといって歩みをとめるわけにはいきません。保育も保育運動も休止することなく、これまでの活動の土台の上に、今できる実践や運動をすすめていくことが必要です。

2.コロナと児童福祉法24 条1 項―運動をしてきたからこそ今がある
コロナ禍の中で、保育分野ではさまざまな問題が顕在化しました。安倍首相による突然の学校一斉休校要請(2月27日)、4月7日に発出され、その後全国に拡大された緊急事態宣言による休園を含む保育の縮小、そして6月25日に全面解除となったものの、7~8月には新たに感染が拡大し、いまなお保育現場では極度の緊張の中での保育が続いています。

コロナ禍の中で、保育は、医療や介護などと同じく、社会の維持に必要な仕事―エッセンシャルワークとして位置づけられました。しかし医療や介護分野では、コロナ感染防止のための休所や、利用者の減少によって施設の収入が減り、職員に賃金が支払えず、雇用すら守れない状況になっているのです。また、コロナばかりでなく、自然災害が起こるたびに、職員の犠牲のもとで施設機能の維持が求められるような仕組みでよいのかどうかも問われています。

一方、保育所等では、休園や保育の縮小で登園児が激減する状況になっても、在籍児童数に基づく公定価格は基本的に保障され、保護者負担も日割りで返金されるなどの措置が、内閣府等からいち早く打ちだされました。これは、子ども・子育て支援新制度の導入にあたって介護保険のような仕組みにさせず、児童福祉法24条1項(市町村の保育実施責任)を維持させたことの成果といえます。

この間、保育制度についても、公的責任を後退させ、介護保険のような仕組みへの転換が、制度「改革」として、繰り返し提起されてきました。その際にターゲットになったのが、保育は市町村の責任で実施することを規定した児童福祉法24条1項です。1990年代以降繰り返しその廃止が課題とされてきましたが、保育関係者がそれでは子どもを守れないと粘り強く運動を展開し、必死で維持してきたものです。そうした努力のうえにある24条1項が、自然災害発生時にも、そして、このコロナ禍においても機能したといえます。 

3.署名運動を積み重ねてきたことの意味
2019年は、10月からの幼児教育・保育の無償化実施に伴う制度変更に加え、保育切り捨てに関わる諸政策の突然の提案が続きました。しかし、その都度、私たちが機敏に対応し、押し返すことができたのは、運動で守った児童福祉法24条1項、市町村の保育実施責任に基づく公的保育制度に依拠し、学び、声をあげてきたからです。すべての子どもに格差無く平等な保育を提供することを、署名運動などを通してくり返し世論に訴え続けたことが、国会議員や政治を動かす力になっていったからです。第200回国会、参議院で署名が一部採択されたこと、紹介議員が与野党含めて過去最高の108人になったことはその象徴であり、粘り強く積み重ねてきた運動の力に確信を深める必要があります。

保育・子育ての現場には、その時々の状況に応じて多様な願いや要求が生じます。それらの要求を確かめ合い、実現のために学び、声を上げ続けることが常に求められています。特に2020年は、コロナ禍というこれまで経験したことのない事態のなかで、問題解決のための新たな学びや運動がいっそう必要になっています。「学習は力、数は力、継続は力」です。学び、なかまとつながり、声を上げ続けるとりくみを、今、どんな形でできるのか。これまで積み重ねてきたことを土台にしながら、知恵を出し合い、運動をすすめていきましょう。

 

Ⅱ.コロナ禍で明らかになった運動の課題-署名運動のポイント

コロナ禍は保育・学童保育が社会基盤として必要であることを明確にした一方で、貧しすぎる保育環境、職員配置・面積基準を誰もが痛感し、「保育・学童保育の条件はこのままでよいのか?」という現場からの声が大きくなっています。コロナ禍のもと、特別保育等によって少人数での保育が実施されたことで、一人ひとりの子どもに目が届き、ていねいな保育ができたと、多くの人たちが実感しています。

第200回国会における国会請願署名の採択に見られるように、この間の運動を通して保育問題の抜本的な解決を求める機運がいっそう高まっているいま、国の姿勢を大きく転換させていくための運動をすすめ、世論形成をしていくチャンスといえます。

コロナ禍で実感した、どんな状況のもとでも子どもの安全と発達を保障できる保育環境・保育条件の実現、権利としての保育の拡充をめざして、大きな一致点で世論に訴え、国を動かしていくことが必要です。あらためて私たちの願いを確認・共有し、抜本的な政策転換を求めていきましょう。

1.コロナ対策としても、発達を保障する保育を格差なく実現するためにも基準の引き上げを

①施設面積基準など保育環境改善
保育現場における子ども1人当たりの施設面積基準(2歳以上1.98㎡)は70年以上も改善されていない戦後直後の基準のままであり、「食べる、寝る、遊ぶ」生活の営みをすべて同じ保育室で行わなければならないという、狭く貧しい基準です。「密になるなと言われても、こんなに狭くては無理」というのが現場の切実な声であり、改善が必要です。

②職員配置基準の改善で増員を
年齢別職員配置基準はその保育所全体で必要な保育士数「保育士定数」を割り出し、費用を保障する基準にすぎません。たとえば4・5歳児の国の職員配置基準30対1は、戦後直後から改善されていませんが、4・5歳児が25人いる場合では、25÷30で保育士1人分に足りないし、子どもが31人になったとしても2クラスになって保育士が2人配置されるわけではありません。ここが学級制をとっている幼稚園や小学校と大きく異なるところです。さらに、配置基準は8時間保育が前提になっており、11~12時間開所が一般的になっている現状や、コロナ対策の消毒や給食指導を行うには、とうてい人手が足りません。
小学校でも少人数(20~30人)学級を求める運動が広がっています。保育・学童保育でも時間と業務に見合った職員が配置できるよう、配置基準を改善して職員の増員をすすめていくことが必要です。

2.保育・学童保育で働く職員の賃金を専門職にふさわしく改善を

保育所は、子どもの発達を保障するだけでなく、保護者の労働や家族の生活を支え、地域の子育てを支援する施設として期待されています。しかし、その役割を果たそうとするほど長時間過密労働となり、職員に大きな負担がかかることになります。

専門性が高く責任の重い仕事にもかかわらず、賃金が全産業の平均より8万円も低く、年間300日・1日11時間を超える開所日数や開所時間に見合わない保育費用(公定価格)と幼稚園との格差、最低基準と労働基準法さえ守れない制度や条件などの改善が急務です。

3.すべての子どもに格差なく等しく質の高い保育を保障する無償化を

2019年10月から実施された幼児教育・保育の無償化は、①3~5歳児が中心で、0~2歳児は住民税非課税世帯など対象を限定、②3~5歳児の給食食材費の実費負担化、③条件が整わない認可外施設も対象にする、④公立保育所等の無償化財源は自治体任せで、無償化を口実に一層の民営化・統廃合がすすむ、⑤無償化に財源がとられ、待機児童解消、保育士の処遇改善が後回しに、などの問題が指摘されています。

私たちの願いは、すべての子どもに格差なく、等しく質の高い保育が保障されることであり、無償化も、その実現に資するものでなければなりません。日本の就学前保育・教育における公費負担の割合はOECD諸国で最低のレベルです。日本の経済力をもってすれば、国の提案する「無償化」の限界を乗り越えることと、他の改善要求を同時に実現することは十分に可能です。保育・幼児教育・学童保育に対する公財政支出の大幅増額を求めましょう。

4.認可保育所整備を基本に待機児童解消を

私たちは子どもの権利を保障する立場から、保育の質の低下につながりかねない規制緩和、基準切り下げをやめ、すべての施設で認可保育所なみの水準を確保し、また引き上げることと、待機児童の解消を両立させることを求めていきます。

この間、待機児童解消を口実に、貧しい基準の規制緩和がさらにすすみ、保育環境は著しく悪化しています。保育事故も一向に減らず、子どもの発達だけでなくいのちと安全が脅かされる事態も広がっています。
待機児童の解消は急務ですが、預けられればどんなところでも、どんな保育でもいいわけではありません。保護者が求めているのは、公的責任が明確で、基準や条件を維持した認可保育所に他ならないのです。

待機児童数は減少していますが、待機児童として数えられない隠れ待機児童が増えている実態があります。市町村に対して認可保育所に入りたくても入れなかった真の待機児童数を明らかにさせて、事業計画の見直しを求め、国に対して保育所や学童保育の整備計画の策定と特別な財源措置を求めましょう。また、人口減少地域においても、必要な保育・学童保育が確保できる条件整備と財源確保を求めていきましょう。

 

Ⅲ.こんな予定でとりくみます

●10/15~11/15 保育アクション2020(街頭宣伝など目に見えるアピール)

●10月下旬~11月上旬 
地域で地元議員と懇談
(請願署名の紹介議員の要請等)
各都道府県の保育連絡会が中心になって準備します
11月4日国会要請行動(東京の議員会館に集まり、厚労省・内閣府との懇談や議員要請を行います)

●署名簿のしめきり 第1次集約10月26日(月) 
第2次集約は11月末を予定しています(臨時国会会期末までに提出予定)。