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(13.05.07)全保連ニュース 第3号 子ども・子育て会議論議スタート

月刊『保育情報』速報版 全保連ニュース 第3号 2013.5.7
情報1 子ども・子育て会議論議スタート
「子どもを差別するな」を基本に/保育所行政の後退を許さない運動を
情報2 「保育所の基準」を現場で検証 !
基準緩和でなく保護者の望む待機児童対策を
情報3 株式会社の参入促進要請・安全基準見直し検討
厚労省が規制改革会議に回答

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子ども・子育て会議論議スタート
「子どもを差別するな」を基本に/保育所行政の後退を許さない運動を


政府の子ども・子育て会議が、4月26日に論議をスタートさせました。
当日は、会議の会長に白梅学園大の無藤隆氏を選出しました。会議は冒頭から、幼稚園団体の委員から、私立幼稚園としては、新制度を認めていないという趣旨の発言がありましたが、今後、月一回のペースで会議を開く(次回は5月30日)とともに、専門部会の1つである基準検討部会の初会合が5月8日に開かれることが明らかにされるなど、粛々と進行された模様です(会議資料は、保育研究所の保育情報データベースで検索できます。また、内閣府HP(http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/kodomo_kosodate/index.html)で、会議の様子を写した動画も視聴できます)。
この初会合の一般傍聴を、内閣府は認めませんでした。今後も傍聴を認めないようでは、新制度導入に都合のいい情報や法解釈ばかりを提供し、国民が新制度の内容に疑問を持たないようにしていると批判されてもしかたないでしょう。そうであるならばなおさら、保育関係者が今後、機会あるごとに会議本体や、各委員、内閣府・厚労省、自治体等に働きかけをする必要があります。
全保連では、各委員の名簿を用意するなど、各地・団体の活動を支えるよう行動していきます。

●今後の取り組みの視点
ここでは、今後の新制度導入に向けた運動の視点を提案します。
新制度は、多様な施設や事業類型を設定して、保育に格差を持ち込むなど、大きな問題を抱えたものであり、全国保育団体連絡会としては、新制度の導入・実施は容認できないという立場には変わりがありません。
しかし実際に、制度導入に向けた動きが、自治体を巻き込んで始まっている以上、その動きに対し、適切に意見表明をするなど行動をおこしていくことが重要であると考えています。
無理矢理の実施ではなく、待機児童対策に全力を
政府は、新制度の本格実施を2015年4月として準備を急いでいますが、幼い子どもの命にかかわる制度の変更を、拙速に進めることは問題です。そこで第1に、政府に対して緊急課題である待機児童対策に全力をあげ、新制度導入は、十分な議論と説明がされ自治体や国民の疑問や不安が払拭されるまで、期限を設けず先送りすることを、求めていきます。政府が予定している、2015年4月の本格実施は、法律に規定された最短の日程であり、政府が決断さえすれば、翌2016年4月まで実施を遅らせることは法改正なくできることです。こうした事実を踏まえながら、活動することを呼びかけていきます。
格差を持ち込ませない
第2に、国や自治体、国・地方の子ども・子育て会議等に対しては、子どもの平等原則に反し、保育に格差を持ち込むことは許さないことを基本に主張することが重要です。
新制度をそのままにしていては、施設・事業の基準や公的責任のあり方、さらには認定などの仕組みを通じて、様々な格差が持ち込まれるのは必至です。そうした問題状況をなくすには、関連三法の改正しかないのですが、改正も視野に入れながら、たとえ改正ができなくても、新制度に不安を覚えている広範な人々と連携することができれば、問題状況を少しでも是正することは可能であり、そのための運動が待たれているのです。
保育所を守り発展させることの重要性
ここで、注意が必要なのは、格差を持ち込ませないためにも、保育所の現状を守り向上させることが重要だということです。
保育に格差が持ち込まれるということは、例えば、新たに導入される地域型保育の諸事業の基準が、保育所より低く設定されることを許し、子どもを差別することです。保育所に代わる地域型保育等で低い基準が設定されれば、保育所の基準を引き下げる圧力になるのは必至です。逆に、保育所の基準を守り向上させることと、格差を設けるなとの運動を大きく展開できれば、それは地域型保育の基準に影響し、その底上げにまでつながるでしょう。
なにより、保育所こそが、現時点でもっとも多くの施設を有し、また最も多くの子どもたちの保育を行っているのです。その保育所が一丸となって主張し、行動することが、新制度を少しでもよくすることにつながります。また、新システム反対運動の成果として、児童福祉法24条1項の保育所における市町村責任を残させたことも大きな力になります。
つまり、格差を持ち込むなという基本の主張と、保育所に関わるあらゆる面での後退を許さず、向上させることをセットにした運動こそ、私たちのとるべき道といえます。
分断を許さず、一致して行動を
保育における公的責任を後退させるという当初の目的どおり新制度を実施したい官僚らは、幼保連携型認定こども園を持ち上げ、それへの移行を誘導することで、保育所勢力の分断を図ろうとしています。
「幼保連携型認定こども園に移行した方がいいのか、保育所にとどまった方がいいのか」と、子ども・子育て会議の論議の推移を見守って判断しようとしている関係者も多いようですが、少なくとも今は、そうしたことを論じる時期ではありません。
保育所を守り発展させることが、全体の底上げにつながることを見据えて、職員や保護者や保育所経営者などの関係者が、分断工作に惑わされず、国や自治体に対して声を上げていくことが求められています。
論議を見守るのでなく、しっかりと声をあげよう
また、保育所は現行どおりと行政から説明されていると、安心されている方もいるようですが、新制度で保育所がどのように扱われるか、現時点で約束されている事柄はほとんどありません。現在の保育所を支えてきた諸々の基準は、運営費や施設整備費の国庫補助の中で規定されてきたものがほとんどです。施設整備の国庫補助の廃止が法律に明記されたように、新制度は、そうした補助のあり方を根底から変えるものです。保育所運営費も新制度にそのまま移行するわけではありません。給付の仕組みを基にする新たな「委託費」がどのような額になるのか、民改費がどう扱われるのかなど、何も示されていない状態です。
こうした民間保育所の問題だけでなく、認定によって短時間保育が導入されることなどを考えると、保育所関係者が黙っていたり、あるいは政府に遠慮気味の団体幹部にお任せにしたり、さらには、まだ確定していない幼保連携型認定こども園の優遇措置などに幻惑されて、動きが鈍くなったりしたら、せっかく勝ち取った24条1項が形骸化してしまいます。それこそ官僚ら新制度推進派の思惑どおりといえます。
保護者だけでなく新制度賛成の方々にも呼びかけて
今こそ、保育所を守り発展させることが、すべての子どもの幸せにつながることに確信をもって、新制度に賛成していた方々にも働きかけながら、保護者、保育者、経営者等が一緒になって、政府や国の子ども・子育て会議、新制度の実施主体である自治体当局や、その子ども・子育て会議等に向けて活動していくことを呼びかけます。
全保連としても、そうした取り組みが促進されるよう、新制度の問題点や課題をわかりやすく解説したパンフレット『ここが問題子ども・子育て支援新制度−このまま実施させないために今必要なこと』(仮タイトル)をはじめ、政府・自治体向けの要望書、地方議会に向けた意見書のひな型などの資料を5月中旬までに順次作成する予定です。ぜひご活用下さい。


「保育所の基準」を現場で検証 !
基準緩和でなく保護者の望む待機児童対策を


実際の保育室に子ども・保育士を配置して検証
待機児童問題に対する関心の高まりを受けて、政府の規制改革会議等が、保育所の基準を緩和することで、その解消をはかるよう検討を進めています。また、2015年から実施が予定されている子ども・子育て支援新制度では、新たに条件を緩和した小規模保育事業などが導入されようとしています。
全保連は、保育所に関わる基準の緩和では、保育環境の悪化を招き、子どもの生活と発達を保障するどころか、その安全すら守れないと強い懸念を表明し、活動してきました。そうした活動の一環として、4月28日(日)に東京都杉並区の阿佐谷保育園の保育室を使って、「現場検証・保育の基準/規制緩和による待機児童解消策でいいのか?」を実施しました。
杉並区で認可保育所増設による対策を求めている「保育園ふやし隊@杉並」の方々などに協力をお願いして0〜2歳のお子さんと、阿佐谷保育園とその姉妹園の荻窪北保育園の保育士とが、一緒に保育室に入り、保育の場面を再現しました。

3場面で検証
検証にあたっては、新制度で導入が予定されている定員19名以下の小規模保育室を想定して、45uの保育室に、@0歳児1人5uの面積を確保した上で、それ以外は最低基準どおりの条件で12人の0〜2歳児を受け入れた場合と、A0〜1歳1人3.3uという最低基準どおりの条件で15人を受け入れた場合、B規制緩和によって多くの特例地域で認められている0〜1歳1人2.5uで19人を受け入れた場合、の3場面で保育を行いました。

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Bの場面で、昼寝用に16人分の布団(ベビーベッド3台分を除く)を敷くと、起きている子は片隅に追いやられたようになってしまいました。また、保育士は泣いている子どもに手が取られ、ベビーベッドにいる子どもに注意を払うことができないなどの状況が、明らかになりました。
この検証は、NHKが当日夜のニュースで映像を放映した他、東京新聞、産経新聞、しんぶん赤旗で報道されました。
否定される保育の専門性
阿佐谷保育園の新妻園長は、「検証中は、子どもがケガしたらどうしようなどと、物の配置や机の置き方ばかり気になっていた。規制が緩和されれば、保育士は子どもの安全を確保し、生理的な要求にこたえるだけになってしまうのではないか。それでは、子どもたち一人ひとりの発達要求、お友だちと共感したいという気持ち、興味・関心を大事にすることなんて、絶対できない」と話しました。
基準緩和は保護者も望んでいない
さらに、「保育園ふやし隊@杉並」代表の曽山恵理子さんは「今の最低基準でも狭い。さらに子どもを詰め込んでの待機児童解消は、私たちの望むところではない」と語り、「赤ちゃんの急死を考える会」の会員で、さいたま市の保育園の保護者でもある阿部一美さんは、さいたま市の自民党市議団が、保育所の面積基準引き下げの条例改正案を提案し、継続審議になったことに触れながら、「安全な環境で子どもを預けたいから、認可保育所の増設を求めている。数と質をセットで考えてほしい」とコメントしました。
第3場面の検証の条件である0〜1歳児1人2.5uの基準は、東京都の認証保育所などですでに導入されている基準です。全保連としては、そうした条件で保育をされている方々のご努力や実践を否定するものではありません。しかし、その厳しい状況を改善するのではなく、逆に厳しい状況を拡大しようとする動きに対しては、反対の立場をとるものです。
今回の検証は、短時間のものでしたが、実際の保育は一日を通して行われていることを確認する必要があります。低年齢児の保育は、特に、子どもの生活リズムの違いに対応しなければなりませんが、狭い空間では困難といえます。また、感染症の蔓延を防ぐことも難しいでしょう。
言葉で自分の気持ちを表現できない幼い子が、押し込められれば、「かみつき」等のトラブルが頻発し、保育者はその対応に追われます。さらに、新制度で導入が予定されている小規模保育では、保育室以外の空間・「逃げ場」がまったく用意できない恐れがあり、保育をする上でさらに困難が予想されます。
今回は、緊急な取り組みにも関わらず、多くのマスコミの取材を受けることができました。なにより検証に参加された、保護者や保育士の方々と共に「今の最低基準でも低すぎる。その上、規制緩和なんてとんでもない」という実感を共有し合うことができました。
各地で現場検証を!
新制度の導入にあたっては、様々な保育施設や事業の基準が論議されます。ぜひ、新制度導入論議に向けた取り組みの一環として、各地・各園で同様の取り組みを行い、自治体関係者や地域の保育関係者と、子どもに必要な環境や基準について話し合うことを呼びかけるものです。


株式会社の参入促進要請・安全基準見直し検討
厚労省が規制改革会議に回答


規制改革会議が、保育に関わる規制緩和を求めている事に対し、厚労省は5月2日の規制改革会議において、省としての対応方針を表明しました(保育情報データベース参照のこと)。
株式会社の参入促進要請を行うと回答
規制改革会議の要求は多岐にわたりますが、筆頭に求めていたのが、株式会社の参入促進です。認可保育所設置主体の制限は、すでに2000年度から撤廃済みですが、懸念材料が多いとして株式会社の参入を制限している自治体を問題視して、待機児童解消策の1つとして企業参入を積極的に進めた横浜市並に、参入を促すような策を国として講じろというのが、会議の主張でした。
これに対し厚労省は、子ども・子育て新制度になれば、保育需要が満たされていない地域では、参入申請を拒めず、自治体の裁量は縮小すると説明し、自治体に対しては、そうした趣旨を周知徹底するよう、「積極的かつ公平・公正な認可制度の運用」を求める通知を出すと回答しました。
都道府県等の権限である認可の判断に、権限のない国が介入できないという、当たり前の事実を踏まえた回答ともいえますが、マスコミは「認可保育所 株式会社参入全面解禁」(毎日新聞5月2日付夕刊)と、まるで参入を煽るような報道を行いました。その結果、自治体に、企業参入の加速を迫る圧力が増すことが予測されます。
待機児童解消が進まない要因が、企業参入を進めなかったことにあるという考え方は、実に短絡的です。良質な保育環境を維持しつつ待機児童の解消を図るには、施設整備費を計画的に確保しながら、施設づくりを事業者まかせにしない市町村の姿勢こそ重要であり、企業参入が決定的な意味を持つわけではありません。事実、施設整備も含めて企業任せにした結果、保育士も遊具も不足したまま開園し保護者の不安が募っている例や、人件費抑制のために管理者まで非正規雇用で、年度途中で大幅に入れ替わる例や、突然撤退してしまった例など、さまざまな問題がすでに報告されており、市町村としての責任が問われているのです。
今後、自治体に対しては、企業参入の圧力に屈するのではなく、公的責任を自覚し、保育所整備計画の作成など抜本的な待機児童解消策を即時実施することを求めるとともに、国に対しても、そうした自治体を後押しするよう国として整備計画を立て、実行することを強く求めることが重要です。
面積・資格基準の緩和を見送りか?−即断は危険
規制改革会議は「待機児童の多い地域での特例的・時限的な規制緩和」として、保育者の資格要件の緩和や面積基準の緩和を求めていましたが、厚労省としては、質確保を願う保護者の声に応えるものではないと反対の意思表示をしました。この間の規制緩和に異を唱える保護者らの行動が功を奏したといえそうですが、この回答に対する、会議側の対応は不明確です。
会議側は、依然として認可外保育施設は、条件は悪いが利用者満足度は高いなどとして、高額になりがちなその保育料の軽減などを求めており、緩和の火種が消えたとは即断できません。
さらに、保育所の避難用の外階段等の安全基準緩和については、厚労省側も代替手段導入を前提として見直しをするともしており、この点についても注視し続ける必要があります。
基準緩和 新制度での論議に注目を
現時点で、規制改革会議が追求の手を緩めるかどうか即断できないので、引き続きその動向を注視し、必要な意見表明を行っていくべきですが、今後、新制度導入のための子ども・子育て会議やその専門部会にも注目すべきと考えます。なぜならそこで、地域型保育の各事業や、認定こども園における基準が論議され、実質的な規制緩和が実行される危険性が大だからです。
今後その動向を追いつつ、基準緩和を許さない声を結集していきましょう。


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