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【16.03.31】待機児童解消のために必要なこと〈論点整理〉

待機児童解消のために必要なこと 〈論点整理〉
― なぜ深刻化したのか、解消のために何をすべきか ―

2016.3.29
全国保育団体連絡会

 保育所の待機児童問題がなぜこのように深刻化しているのでしょうか。
 待機児童問題の深刻化は、認可保育所が不足しているにもかかわらず、この間展開された待機児童対策が、保育所の新増設を基軸にせず、急場しのぎの対応に終始したことで引き起こされたものです。
 現在、待機児童問題への社会的関心が急速に高まったことを受けて政府が行おうとしている対策も、従前の規制緩和策の延長線上にあるものです。このような選択は、保育の質の低下をさらに招きかねないものであり、私たちは認めることはできません。
 今こそ、国がこれまでの規制緩和中心の政策を転換し、真の問題解決のために足を踏み出すことを求めて、以下論点を整理します。

1.保護者の願い

 保育を求める保護者の状況は多様ですが、ただ保育の受け皿が増えることを望んでいるのではありません。その願いは、@子どもにとっての環境・条件が整い、A居住地の身近で、B就学前まで預けつづけることができるような施設への入所にあるといえます。
 こうした保護者の願いを踏まえると、子どもを安心して預けることができる保育の担保として市町村が保育の実施に責任を負うことが重要と考えます。そして、待機児童の解消のためには、市町村の直営ないし委託事業であり、一定の条件が整い、就学前まで保育を受けることができる認可保育所の新増設を基軸にすすめることが必要といえます。

2.待機児童問題が深刻化している自治体の特徴

 待機児童問題が深刻化している自治体は、子どもの人口に比べ認可保育所が極端に不足していた地域です(i)。この問題が社会的に注目されはじめた2000年以降も、後述する待機児童対策の影響を受け、認可保育所の新増設が中心課題にならず、逆に抑制されたことで、事態の深刻化を招いたといえます。このような自治体は、よく言われるように「保育所を作っても、作っても、足りない」のではなく、もともと不足しているのに、その後も他地域に追いつくような保育所作りが行われなかったのです。この事実を踏まえることが、問題解決の出発点といえます。

3.これまで(2000年代以降)の待機児童対策の問題点

@ 規制緩和中心の国の待機児童対策
 国が行ってきた待機児童ゼロ作戦などの施策は、認可保育所の新増設を中心にすえず、既存施設の定員を超えた入所の拡大による詰め込みの促進などの規制緩和策に特化したものでした。
A 保育所の整備にブレーキをかけた自治体独自施策
 東京都の認証保育所が代表例ですが、都市部自治体は、独自の認可外保育活用制度を待機児童対策として推進しました。そうした制度は、保育士資格者を6割でも可とするなど認可保育所の基準を規制緩和して適用するものですが、先に示した保護者の願いに沿ったものとは言い難く、あくまでも次善の選択肢にすぎません。こうした施設ができることで、たしかに3歳未満児保育の受け皿は拡がりましたが、一方で認可保育所の新増設にブレーキがかかってしまいました。
B 問題状況をあいまいにした待機児童集計
 国の待機児童数の把握や公表の仕方などに問題があり、深刻な実態を社会として共有できなかったことも忘れてはなりません。厚労省は、待機児童解消が政治的な課題になると、より少ない数値が集計されるように待機児童のカウント方法を変えてしまい、待機児童の実態を見えづらくしてしまいました(ii)
 このことで、待機児童問題はすぐに解消するとの誤解が広がり、結果として自治体は、認可保育所の新増設に本腰を入れず一時しのぎのような対応に終始してきたといえます。
C 公立保育所の新増設という切り札を切らせない政策状況
 公立保育所の運営費・施設整備費財源に対する国庫補助が削られたことで、公立保育所における待機児童対策の実施にもブレーキがかかってしまいました(iii)。加えて最近になって国は、公立保育所の統廃合を促進するような新たな計画づくりを自治体に求めており(iv)、公立保育所による受け皿拡大という、自治体が即決できるカードが切れない状況になっています。
D 小規模保育等の拡大で生じる「3歳の壁」
 2015年度から実施された新制度によって導入された地域型保育の各種事業は、保育所よりも条件を緩くして、3歳未満児保育を「柔軟」に拡大することを目的としていますが、実施1年目にして「3歳の壁」ともいうべき卒園後の受け入れ先不足問題が顕在化しています。小規模保育等を増やせば増やすほど3歳以降の受け皿不足問題が深刻化してしまうのです(v)

 このように、この間の待機児童対策は、認可保育所の新増設を主軸としない対策でした。今こそ、その転換を図るべきです。

4.さらなる規制緩和には反対

 このような状況を受けて、規制緩和をさらにすすめたり、市町村や、社会福祉法人等の事業者が施設の新増設に消極的だからとして、保育を市場化して自治体の関与をなくし、企業等が自由に保育施設を設置・運営できるようにすることが政府の内外で検討されています。しかし、これまで以上の規制緩和や保育の市場化ともいうべき施策の展開は、子どもの安全やその成長発達に大きな支障をきたす恐れがあり、絶対に容認できません。
 なお、認定こども園の活用を求める意見もありますが、この制度は低年齢児保育を促す仕組みではなく実際に限界もあるようです(vi)。さらに幼稚園の活用についても、待機児童問題が深刻な地域は子ども人口が増えるなど、幼稚園としても低年齢児保育の実施にまで手が回らない状況にあります。

5.今後求められること

 最近になってやっと国・自治体も、認可保育所の整備を打ち出してはいますが、その取り組みはまったく不十分です。遊休地があるのに保育所用に貸し出す国有地が明らかにならなかったり、貸し出ししても高額な賃料を課して、市町村の負担軽減どころか逆に重荷を背負わせる例もあります。
 急速に保育所等の整備をするためには、自治体や事業者の努力だけでは限界があります。市町村や社会福祉法人等の事業者に負担を強いる状況を改善するために、国は、この間の政策を改め、施設整備補助を大幅に改善するほか、公立保育所の整備拡充に財政的支援を復活させるなど、公費投入の増大を基礎に自治体や事業者を支援すべきです。
 さらに国は、3月28日に待機児童解消緊急対策を発表しましたが、既存施設への子どもの詰め込みと規制緩和が中心の内容であり、緊急と言いながらこれまでの政策と全く変わりません。それどころか、国の基準以上に上乗せをして保育の質向上に努めている自治体に対して基準切り下げを要請するなど、保護者・保育者の願いや子どもの権利保障を否定していると言っても過言ではありません。
 規制緩和に頼ったこれまでの政策を引き継ぐのではなく、これを抜本的に転換し、認可保育所の整備を主軸にした対策を、国をあげて推進することこそが緊急に必要です。
 なお、待機児童解消のためには、保育士不足問題の解決が不可欠です。そのために、保育士の処遇改善を実現し、専門性を確立すべきですが、この点については同時に示した「〈見解〉保育士の処遇改善は保育問題解決のための最優先課題」を参照下さい。



  1.  待機児童数の多さで注目される東京都世田谷区を例に取ると、その保育所普及率(保育所入所児童数÷当該人口×100 世田谷区調べ)は、2015年当初の段階で25.8%である。全国平均の36.2%(2014年度、『保育白書』2015年版調べ)と比べ、10ポイント以上も下回っている。なお、東京都全体の普及率は、2013年度において31.2%であり、やはり全国平均を下回っている。
  2.  厚労省は2001年に、待機児童数についての「新定義」を示した。新定義では、それまで待機児童としていた、認可保育所には入れていないが自治体が何らかの補助を出している認可外保育施設へ入所している子どもは待機児童数から除外することで、旧定義に比べその数は4〜5割減となった。保育所の整備目標を明確にするには、隠れ待機児童数も含めて明らかにすべきだったが、逆に課題を曖昧にしてしまった。
  3.  公立保育所の運営費の国庫補助外しは2004年度から、施設整備費補助の国庫補助外しは2006年度から実施された。民間保育所には国庫補助があるのに、公立保育所を維持したり新設する場合は、すべて市町村負担となった。このことで、民営化や統廃合がすすみ、待機児童問題が深刻なのに公立保育所が減るという事態が進行した。
  4.  2014年、国は自治体に対して、公立保育所などの公共施設の統廃合を進める計画(公共施設等総合管理計画)策定を求めている。それを推進すると財政的に優遇されることになる。
  5.  小規模保育等での3歳児の受入容認化も検討されているが、活動量が飛躍的に増す3歳以上児にとって、園庭設置を前提にしていないような小規模保育事業等が保育の場として相応しいとは言えない。
  6.  新制度が導入されてからの既存施設の認定こども園への移行状況は、保育所からの移行が幼稚園からの移行を上回っている。これは、保育所から移行した場合に収入増が図れる特殊な単価が設定されたこと等が要因と考えられる。しかし、保育所から認定こども園に移行しても、保育を必要とする子どもの受け入れ枠が増えることにはつながらない。この点を踏まえると、この制度の待機児童対策として効果は限定的といえる。

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