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【12.03.21】「子ども・子育て新システムに関する基本制度」に対する見解

公的責任に支えられた保育制度を解体し、
保育を産業化する「子ども・子育て新システム」の撤回を求めます


「子ども・子育て新システムに関する基本制度」に対する見解

2012年3月17日
全国保育団体連絡会

1. 3月2日、政府は少子化社会対策会議において、費用負担や指定基準など重要事項について何ら示さないまま「子ども・子育て新システムに関する基本制度」を決定しました。しかし、とりまとめにあたって納得と合意が得られたとはいえず、新システムは多くの問題点を抱えたままです。
 こうした動きに対し、各地域では保護者・保育関係者の中に反対の声が広がり、地方議会でも撤回を求める意見書が多数採択されています。にもかかわらず、政府は新システムの2013年実施をめざして今国会に関連法案を提出しようとしています。私たちは以下の点から、新システムの拙速な導入を認めることはできません。

2. 新システムでは、就学前のすべての乳幼児に質のよい保育を提供するために幼稚園と保育所を一体化してこども園にし、そのことで待機児童の解消もできる、と政府は説明してきました。しかし実際には、新システム移行にあたって、幼稚園には存続も含めて多様な選択肢を残しています。さらに認可外施設、小規模施設など、ビルの一室でも行える地域型保育というより緩い基準の多様な形態を位置付けました。これでは幼保一体化といえないばかりか、保育の質も確保できません。
 また、一体化施設である総合こども園には、待機児童の8割を占める0〜2歳児の保育を義務づけず、待機児童の解消も期待できません。もはや新システム導入の前提は崩れているのです。

3. 私たちが最も危惧しているのは、市町村の「保育実施義務」を定めた児童福祉法24条の「改正」が企図されていることです。市町村が保育の実施に直接責任を負う現行制度が、利用者と保育を提供する事業者の直接契約に変わり、市町村は要保育度認定と利用に応じた個人給付を行うだけとなります。保育施設の選択・利用は保護者の自己責任になるのです。
 しかも、認定は保護者の就労が基本であり、3歳未満児については保護者が就労していなければ保育の利用が難しいことは変わりません。また短時間の認定区分が導入されることで、これまでより保育の利用が制限され、利用時間に応じて保育が細切れにされてしまいます。

4. 保育の量的拡大をはかるとして新たに導入される事業者指定制度は、現行の認可基準より低い指定基準が設定されることが想定され、保育水準の低下が危惧されます。そのうえ、子どものために支出される公費を、儲けとして歯止め無く流出できるしくみも問題です。事業者には上限なき上乗せ徴収が認められ、保護者負担は確実に増えることになります。新システムは子ども本位に保育を充実させる制度ではなく、営利企業本位の制度設計になっているのです。

5. いま求められているのは、拙速に制度を改変することではありません。より確実に保育を充実させるためには、新システムの導入ではなく、公的責任が明確な現行制度のもとで、あまりに低い国負担を増やすことです。そうすれば、@保育所の増設による待機児童の解消、A国負担の引き上げによる保育料の引き下げ、B職員配置基準の改善による保育者の増員、C保育者の処遇改善による保育の質改善、などを確実に効率よく実現できます。

6. 大震災から1年がすぎてなお、被災地では保育所や幼稚園の再建、放射能対策など、子ども分野の復興は遅々として進んでいません。また日本の社会全体を見ても、貧困や虐待への対応も急を要しており、保育・子育てへの公的支援の拡充はいっそう重要になっています。
 私たちは、新システムではなく、公的責任を明確にした現行制度を子ども本位に拡充し、財源を保障することを強く求めます。保育・幼児教育関係者だけでなく幅広い国民のみなさんに、子どもの権利を侵害する新システム撤回を求める運動への共同を心から呼びかけ、「よりよい保育」のあり方を多くの国民と共有するために、地域から創意あふれる実践と運動をすすめていく決意です。


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