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【11.05.30】5.22緊急集会 基調報告

2011年5月22日 東京・芝公園23号地
<基調報告>
被災地の子どもたちに保育の保障を! 待機児童解消と保育充実を!
新システム反対! 5.22緊急集会

<主催>よりよい保育を!実行委員会
(保育制度の解体を許さず保育の公的保障の拡充を求める大運動実行委員会)
<連絡先>全国保育団体連絡会
(東京都杉並区阿佐谷北3-36-20 TEL03-3339-3901)


保育をめぐる情勢と保育運動の課題

 私たちは、国と自治体が責任を負う公的保育制度の解体につながる幼保一体化を含めた「子ども・子育て新システム」を拙速に導入しないこと、現行保育制度の拡充と予算の大幅増額によりすべての子どもにゆきとどいた保育を実現すること、を求めて全国各地からここに集いました。

1.震災復興を名目にすすむ構造改革路線

 東日本を襲った未曾有の大震災から早2カ月が経ちました。政府は、震災復興構想会議を4月に設置しましたが、震災復興を日本再生と位置づける財界は、東北地方を道州制の先行モデルとすることや公共サービスの民間開放、規制緩和、環太平洋連携協定(TPP)の推進などを求めています。
 また、6月にまとめられる予定の「社会保障と税の一体改革」では、「給付の重点化、選択と集中、優先順位の明確化」などの制度改革案が厚生労働省から提案されており、「子ども・子育て新システム」の実現も柱の一つになっています。しかしそのねらいは、震災復興に名を借りて社会保障の切り捨てと増税をセットで行い、「構造改革」路線の継続・強化を図ることにあり、「非常時」を理由に、国民や子どもに犠牲を強いるような政策としてとらえる必要があります。
 一方、国会では地域主権改革一括法案が充分な議論もなく可決されました。児童福祉施設最低基準は廃止され、6月に出される省令をふまえての地方条例化に対する都道府県への取り組みが、緊急に必要です。

2.震災で明らかになった公的保育制度の重要性

 震災当日、保育中の子どもたちとの避難や、その後の避難所での保育活動など、保育関係者は命がけで子どもたちを守り抜きました。これだけの大災害で、保育中の子どもたちが一人として命を落とさなかったことは奇跡とさえ言われています。今回の震災で、幼い子どもを安全に守ることができる保育所の機能の重要性が改めて示されたといえますが、その土台にあるのは公的責任や最低基準を柱にしている現行保育制度であり、制度拡充・強化の必要性もいっそう明らかになりました。
 しかし、いま国が検討している「子ども・子育て新システム」のもとでは、保育所がこうした機能を果たすことは困難になります。市町村の保育実施責任をなくし、保育を市場化して経済効率を優先させるシステムでは、条件の切り下げは必至であり、そうしたなかで子どもを守ることは難しくなるでしょう。

3.子ども・子育て新システムの何が問題か

 5月11日、震災後2か月ぶりに子ども・子育て新システム検討会議の幼保一体化ワーキングチームが再開されました。会議では6月に改革案がまとめられる予定の社会保障と税の一体改革にあわせて議論をまとめていく方向が示唆されました。
 提案では、これまで「こども園」としていた幼保一体化施設を新たに「総合施設」と呼称し、指定基準をクリアした認可外施設も含めて、給付の対象となる多様な施設をすべて「こども園」と呼称するとしました。
 また、これまでことさらに保育と区分けしてきた3歳以上の「幼児教育」を、今後は「学校教育」と整理するとしましたが、保育とは養護と教育の一体として整理されるべきであり、3歳未満児と3歳以上児を区分することは乳幼児期の保育の重要性をないがしろにするものだ、との批判が出ています。しかし検討会議では「完璧な制度などありえない。実施をしながらよいものにしていく」など、無責任きわまりない議論によって、強引なとりまとめがされそうな状況になっています。

 新システムの内容と問題点は以下のように整理できます。

  1. 新システムでは児童福祉法第24条に基づく市町村の保育の実施義務がなくなり、市町村は保育の必要度の認定と保護者向けの補助金支給といった、保育の供給に補助的にかかわるだけになります。
  2. 保育所への企業参入を図るために、基準さえ満たせば参入も自由、撤退も自由という事業者指定制度が導入されます。企業の儲けを確保するため、保育のために支出される補助金の使途制限をなくすことも検討されています。
  3. 保育料は所得に応じた負担(応能負担)から利用に応じた負担(応益負担)に変わります。国が定める公定価格を基本にしつつも自由価格や実費徴収も認められ、施設や地域によって格差が生じます。
  4. 多様な事業者ごとに指定基準が導入され、あわせて最低基準の地方条例化によって最低基準がなくなり保育水準の格差が広がります。
  5. 多様な施設をすべてこども園と称する幼保一体化は給付の一体化にすぎず、3歳未満児(保育)と3歳以上児(学校教育)とを区別するなど内容の一体化にはほど遠いものです。

4.保育を必要とするすべての子どもに安心できる保育の場を

 被災した子どもたちはすべて保育に欠ける子どもであり、現行制度のもとでは自治体の責任において保育の保障をすることが必要です。しかし大震災によって多大な被害を被った自治体が多いなかで、自治体にその責任を果たさせるためには、国の緊急支援が必要です。
 また、都市部で増加する待機児童の問題も、子どもの保育を受ける権利の侵害であり、放置してはならない問題です。格差と貧困が広がり、加えて大震災という未曾有の困難に直面したいま、すべての子どもたちが安心して育つ権利、発達する権利を保障するために、国と自治体の責任による公的保育の拡充がよりいっそう必要になっています。
 いま、震災復興のためには多少のガマンは仕方がない、財源がないのだから効果的・効率的に使うべきだなどの雰囲気に呑まれず、また新システムになれば、あたかもすべての子どもが保育所に入れるような政府の宣伝に惑わされずに、いまこそ幼い子どもたちのために何が必要なのかを世論に問いながら「新システムよりも震災復興を」「保育を必要とするすべての子どもに安心できる保育の『場』を」の声を広げ、保育制度改革=新システムの即時中止と現行制度の拡充を求めていきましょう。
 すべての子どもにゆきとどいた保育・教育を求め、学習を力に保護者と保育者の手つなぎをすすめながら、以下の課題について、緊急にとりくみをすすめていきましょう。

  1. 児童福祉法24条に基づき、被災地や被災地から避難したすべての子どもたちに、各市町村が責任をもって保育を保障できるよう、国や自治体に対し要望しよう。
  2. 国に対し、被災地における仮設保育所の建設と、都市部における待機児童解消のための緊急保育所整備計画の策定、財源確保を求めることとあわせて、地域で保育所づくり、認可運動をすすめよう。
  3. 新システムの拙速な導入を許さない国会請願署名(新署名)をさらに広げ、請願の採択をめざそう。
  4. 最低基準廃止・地方条例化に対する地方自治体への取り組みをすすめよう。
  5. 自治体が保育の実施責任を果たせるよう、自治体から新システム反対、現行制度堅持・拡充、最低基準の抜本的改善、保育所・幼稚園・学童保育・子育て支援関連予算の大幅増額を求める国への意見書をあげさせよう。
  6. 公立保育所、公立幼稚園の廃止・民営化を許さず、保育所・幼稚園・学童保育・子育て支援関連予算を大幅に増やして保育条件と職員の労働条件の改善をすすめよう。


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