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【10.01.29】アピール「子どもの権利最優先、よりよい保育を実現するために国民的論議を」

アピール
子どもの権利最優先、よりよい保育を実現するために国民的論議を
−保育制度「改革」論議にあたっての保育運動の課題−


2010年1月27日
全国保育団体連絡会

1.激動する保育情勢をどう見るのか

 総選挙による政権交代は、日本の政治が変わるのではないかという期待を国民に抱かせました。国民の声におされ、一部ではありますが、障害者自立支援法の廃止提案、生活保護費母子加算の復活など、自公政権のもとですすめられた構造改革を是正する動きも示されました。しかし一方で新政権内部では政策の不一致が散見され、向かうべき方向性が定まっておらず、逆に新自由主義的「改革」を加速させるような動きも強まっています。

 特に保育分野では、新政権の政策合意(2009.9.9)で「保育所の増設を図り、質の高い保育の確保、待機児童の解消に努める。学童保育についても拡充を図る」ことが確認されたにも関わらず、旧政権の改革論を引き継ぎ、これに幼保一体化を加えた保育制度「改革」方針を決定しています。また、地方分権と待機児童解消を名目に最低基準の廃止・地方条例化を閣議決定したり、2010年度の予算編成作業の過程で突如、民間保育所運営費の一般財源化を提案するなど、保育界を揺るがすさまざまな問題を短期間に浮上させました。民間保育所運営費の一般財源化は、2010年度については保育関係者の運動の力で回避させましたが、「保育所の増設による待機児童の解消」はいつのまにか後景に追いやられ、年末に閣議決定された2010年度予算政府案では抜本的な待機児童対策や予算措置は示されていません。

 しかし、待機児童解消など保育の拡充を求める社会的機運がかつてなく高まっていること、民主党の内部にも保育の拡充を求める政治勢力が存在すること、そして新政権が国民世論やマスコミの報道に敏感なことなど、政治を動かし前進させる条件はあります。必要なことは、新政権に対して国民の要求を示し、その実現を求めて大きな運動を起こすことです。そのために、保育分野の複雑な情勢を整理し、それらの見方もふまえたうえで、よりよい保育を求める運動をすすめるための視点と課題について明らかにします。

2.保育所最低基準の廃止・地方条例化と地方分権

 保育所最低基準などを廃止し、地方条例化することなどを盛り込んだ、「地方分権改革推進計画」が2009年12月15日に閣議決定されました。保育所に関わっては、児童福祉法第45条2項で国が定めるとしている「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」を都道府県、指定都市などの条例に委任し、国が示す基準(@職員の配置基準や施設面積基準については国が内容を拘束する「従うべき基準」にする、A東京等の区域に限って待機児童解消までの一時的措置として、施設面積基準は自治体独自で基準が定められる「標準」にする、Bその他の設備及び運営に関して(園庭、避難用外階段、耐火基準などを想定)は自治体が独自に基準を決めることができる「参酌基準」にする)に従って、自治体で条例化することが提案されています。今後、児童福祉法など法律改正が必要な事項については、2010年の通常国会に、地域主権推進一括法案(第1次)として提出される予定です。

 そもそも最低基準の廃止・地方条例化は新政権の地方分権政策が基本となっていますが、生活に関わる行政サービス(保育・福祉など)をはじめ、対応可能なすべての事務事業の権限と財源を国・都道府県から自治体(市町村)へ委譲していくというものです。今後、地方向けの補助金等はすべて廃止して、地方が自由に使える一括交付金に改めることなども検討課題になっています。

 私たちは地方分権を否定するものではありませんが、総務省主導ですすめられた今回の提案は、結果的に国の権限委譲のみが優先されたようにしか見えません。子どもに関わるナショナルミニマムである保育所最低基準を、十分な議論もなく一方的に廃止し自治体まかせにすることは、子どもの権利保障の水準を、国が自ら切り下げることに他なりません。真の地方分権をすすめるためには国のナショナルミニマム保障が絶対に必要であり、そのうえで地方の独自性の発揮を促すことこそが求められます。

 厚生労働省が構造改革特区で行われている公立保育所給食の外部搬入を私立保育所も含めて全国展開していくという動きも懸念されています。子どもの権利を保障するためにも、今後も最低基準は廃止ではなく改善こそが必要であることを訴え、国民世論にしていく必要があります。

3.旧政権の政策を引き継ぐ新政権の制度「改革」方針

 新政権は、これまで保育制度「改革」について明言してきませんでしたが、12月8日に閣議決定した「明日の安心と成長のための緊急経済対策」に「幼保一体化を含めた保育分野の制度・規制改革」として、「幼保一体化を含め、新たな次世代育成支援のための包括的・一元的な制度の構築を進める」とし、「このため主担当となる閣僚を定め、関係閣僚の参加も得て、新たな制度について2010年前半を目途に基本的な方向を固め、2011年通常国会までに所要の法案を提出する」と明記しました。これは新政権の保育制度「改革」方針の表明とみることができます。しかし、具体的な検討内容は、@利用者と事業者の間の公的(直接)契約制度の導入、利用者補助方式への転換、A株式会社等の参入促進、指定制度の導入の検討、施設整備補助の在り方、運営費の使途範囲・会計基準等の見直し、などでこれまで旧政権のもとで保育制度「改革」について検討してきた社会保障審議会少子化対策特別部会(以下、特別部会)の提案内容と変わらないものです。新政権は旧政権がすすめてきた厚生労働官僚主導の制度「改革」方針をそのまま引き継いでしまったといえます。

 また、12月30日に閣議決定された「新成長戦略」でも、保育施策の中心は「制度・規制の見直しによる多様な事業主体の参入促進」であり、子ども関連産業は成長分野であると明記するなど、子どもの人権保障に配慮のない市場化路線が強調されています。

 保育制度の詳細設計について議論を重ねてきた特別部会は、部会の結論が出る前に新政権が部会の議論を先取りした「改革」方針を決定したことで、12月9日の第30回部会を最後に暫時休会となりました。今後、厚労省は特別部会の制度「改革」方針を、新政権の「改革」方針に盛り込ませるように動くことが予測されますが、特別部会の方針は、学童保育も含めた保育・子育て支援を応益負担原則で行い、国が入所要件と財源をコントロールするという極めて中央集権的なものであり、新政権がすすめる地方分権政策とは整合性がつきません。

 保育制度「改革」論議は、今後、内閣府を中心に行われるという見方もありますが、地域主権戦略会議や行政刷新会議でも保育制度「改革」や規制改革が課題になっており、新政権内部でも合意形成や方向性が定まらないなかですすんでいくことは避けられないでしょう。制度「改革」論議を政府まかせにせず、保護者、保育者など保育関係者が当事者として参画し、議論をリードしていくこと、あわせてこれからの保育のあり方について国民的論議を巻き起こしていくことが求められています。

4.保育をめぐる情勢の評価と運動の課題

 待機児童の解消など、国民の切実な保育要求を実現するためには、旧政権が構造改革路線のもとで続けてきた政策を根本的に転換することが必要です。いま、保育所が圧倒的に足りない状況のもとで、保育制度「改革」や最低基準廃止などの地方分権が同時にすすめば、市町村責任がなくなるなかで財政負担だけが地方に委ねられることになります。このまま事態が進展すれば、自治体は保育事業から撤退し、企業参入が一気にすすむことは避けられず、保育は未曾有の危機に陥ることになりかねません。

 こうした保育制度「改革」の内容や、いま保育がおかれている状況については、保育関係者だけでなく広く国民に対しても事実が正確に伝えられ、共通の理解が得られているとは言い難い状況です。新政権が提案する幼保一体化も、これまで保育界だけでなく幼稚園団体も含めて長く議論されてきましたが、保育内容・資格など多くの点で課題が明らかにされており、結論に至ってはいません。具体的構想も示されず白紙の状態で保育制度「改革」の議論にのせ、短期間でまとめられるような単純な問題ではありません。

 この間、保育に関しては待機児童問題などもあり、かつてなく社会の注目が集まっています。保育施策の拡充は社会の要請になっています。そのことは、保育制度の解体を許さず保育の公的保障の拡充を求める大運動実行委員会がとりくんだ「現行保育制度に基づく保育施策の拡充を求める」国会請願署名が、第173回国会(2009年12月4日閉会)において、夏に選挙を控えた参議院で全会派一致、4年連続採択されたことからも明らかです。また、公立保育所の民営化をめぐって子どもと保護者の保育を受ける権利を認めた最高裁判決(2009.11.26)が出されるなど、保育を受ける権利、保育は人権であるという考え方も広がりつつあります。

 私たちは、保育を必要とするすべての子どもたちが保育を受ける権利を保障されること、保護者が仕事と子育てを両立できること、保育者が子どもと保護者によりそいながら豊かな保育をすすめられること、そんな「保育」の実現をねがっています。そのためにも保育分野の規制改和や制度「改革」ではなく、いまや国際的な潮流となっている公的保育の拡充を求めるものです。国・自治体が責任をもって保育所増設など保育施策の拡充を図れば、地域社会の活性化だけでなく地域経済の活性化にもつながります。保育所の果たす役割がますます重要になっているいま、子どもの最善の利益を保障する「よりよい保育」を国民の共通理解にし、その実現をめざして実践と運動を広げていきましょう。

  1. 国(新政権)に対して、現行保育制度の拡充、予算の大幅増額による待機児童解消のための緊急対策を求めることとあわせて、各地域で待機児童解消のためのとりくみや自治体への要請を、保育所入所を求める保護者とともにすすめましょう。

  2. 直接契約、直接補助を中心とした保育制度「改革」を許さず、公的責任のもとですべての子どもに平等に保育を保障する現行保育制度を拡充し、「よりよい保育」を実現するための論議と運動をすすめましょう。

  3. 地方分権を名目にした最低基準の廃止・地方条例化を許さず、ナショナルミニマムとしての最低基準の抜本的改善を求めましょう。最低基準の現場検証などにとりくみ、最低基準の現状と問題点を明らかにしましょう。

  4. 1月開会の第174回通常国会で「現行保育制度に基づく保育施策の拡充を求める」国会請願署名の連続採択を求め、署名の集約と議員への要請を強めましょう。

  5. 待機児童解消、保育制度「改革」、最低基準の廃止・地方条例化などについての意見を、内閣府ハトミミ.com「国民の声」(http://www.cao.go.jp/sasshin/hatomimi/index.html)に投稿しましょう。

  6. 自治体から国に対し@直接契約など保育制度「改革」反対、A最低基準廃止・地方条例化反対、B国の待機児童対策の強化、などを求める意見書提出を求める運動をすすめましょう。

  7. 各園、地域で保護者と保育者の共同の学び合いを軸に、私たちがめざす「よりよい保育」の姿を明らかにしていきましょう。

  8. 各地域で保育園、幼稚園、子どもや保育関係団体との結びつきを強め、「よりよい保育」をめざす共同の運動をすすめていきましょう。

  9. 各地域で、障害、高齢者など他の福祉分野との共同の学習、運動のとりくみをすすめましょう。

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