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【08.05.27】直接契約導入、最低基準廃止・見直し提起に対する私たちの見解

緊急アピール

子どものすこやかな成長・発達の保障は現行保育制度の拡充でこそ!
直接契約導入、最低基準廃止・見直し提起に対する私たちの見解



 私たちはこれまで、少子化にもかかわらず保育需要が急増する状況のもと、保育を必要とするすべての子どもたちにゆきとどいた保育が保障されるよう、保育所の条件整備とあわせて障害児保育や一時保育、病児・病後児保育などの充実について、現行保育制度の堅持・拡充を基本にした国の積極的な対応を求めてきました。

実質的な直接契約導入を提起した社会保障審議会少子化対策特別部会
 5月20日、厚生労働省の社会保障審議会少子化対策特別部会は、「次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に向けた基本的考え方」をとりまとめました。そこでは国と自治体の責任を基本とする現行保育制度を否定し、「新しい保育メカニズム」を基本とした新制度の検討を課題とし、実質的な直接契約制度の導入を唐突に打ち出しています。新制度を提案するのであれば、その具体的内容を示したうえで現行制度との比較検討など、慎重な議論が求められるべきです。直接契約導入など、はじめに結論ありきの議論は容認できません。

舛添厚労相による最低基準の廃止・見直し表明
 さらに同時期、舛添厚生労働大臣は、地方分権に関わる大臣折衝において、全国一律の最低基準の廃止・見直し方針を表明したとの報道がされました。最低基準は国のナショナルミニマムであり、保育・福祉施設の諸条件を支えてきたものです。これを放棄することは保育の地域格差をさらに広げることに他なりません。
 直接契約導入や最低基準の廃止・見直しに否定的だった厚生労働省のこうした方向転換は、公的保育制度が重大な転換点にたったことを意味しており、見過ごすことはできません。

質を軽視した量拡大と、保育の市場化論
 これらの動きの背景には、少子化による経済成長の停滞を懸念し安上がりな労働力を確保したい財界の要求があるといえます。政府・財界は保育の拡充を求める国民の願いを逆手にとり、経済財政諮問会議において女性労働力確保対策である「新雇用戦略」として保育サービスの拡充を提案しました。これを受けた厚生労働省が10年間で乳幼児保育の受け皿を100万人拡大する「新待機児童ゼロ作戦」を発表し、保育の量的拡大を打ち出したのです。増大する保育需要に応えるには、量の拡大だけでなく保育の質の維持・向上が必要不可欠ですが、労働力確保のための安上がりな保育の実現という財界の要求から考えると、「新待機児童ゼロ作戦」において質の維持・向上は難しいといわざるをえません。
 質の向上をなおざりにした量の拡大がどれほど保育水準を低下させるかは、小泉政権時の「待機児童ゼロ作戦」の実態をみれば明らかです。かつて小泉政権は「最小コストで最大の受け入れ」というスローガンのもと、「量」を増やすことを主眼に規制緩和が先行し、定員超過入所の一般化、短時間勤務保育士の導入によるつぎはぎ保育の拡大など保育環境の劣化や、子どもと保護者の意向を無視した公立保育所の民営化や給食の外部委託がすすみました。
 先の少子化対策特別部会の議論では、保育の市場化論には組みしないとしていますが、こうした状況のもとで、充分な検討もなしに制度「改革」論を提案することは、量の拡大を最優先し、保育をもうけの対象とする市場化論にからめとられていく危険性があるといえます。

現行の公的保育制度の拡充を求める
 すべての子どものすこやかな成長と発達を保障するためには、これまで各地の保育所保育を支え、発展させてきた実績のある現行の公的保育制度を基本にすることが最も確かな道です。保育の需要増に対応できない現状を生み出した要因は、現行保育制度にあるのではなく、戦後60年以上もほとんど改善されていない最低基準など条件改善の遅れや、世界的にみても大変貧しい子育て予算にあるのです。問われるべきは現行制度ではなく、子どもをないがしろにする国の政治姿勢そのものです。公的責任が明確な現行制度のもとでこそ、子どもの権利、保護者の権利が保障されることを忘れてはなりません。
 私たちは子どもの権利最優先の保育、子育て支援策の実現を求める立場から、国に対し現行制度の拡充による保育・子育て支援施策の拡充、予算の大幅増額、地方自治体や保護者への十分な配慮を求めます。また、今国会に提案された家庭的保育事業の法制化を盛り込んだ児童福祉法の一部改正案について、公的保育制度を守り子どもの最善の利益を尊重するために審議が尽くされるよう求めます。
 同時に、各地で地域の実態をふまえた次世代育成支援行動計画づくりに積極的に参画し、保育の量の拡充と質の維持・向上のために実践と運動をすすめていくことを決意するものです。

2008年5月25日
全国保育団体連絡会

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