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【04.09.02】〔見解〕地方6団体の「国庫補助負担金等に関する改革案」について

私立保育所運営費・施設整備費の一般財源化、児童福祉法、最低基準の「改悪」は許さない
 全国知事会など地方6団体は「三位一体改革」に伴い、廃止すべき国庫補助負担金について討議をすすめていましたが、議論が紛糾するなか、少数意見も明記するという条件で「国庫補助負担金等に関する改革案」をとりまとめ、8月24日、小泉首相に提出しました。「改革案」の廃止すべき補助金のリストには、私立保育所運営費を含む児童保護費等負担金4127億円、社会福祉施設等整備費1304億円、特別保育事業の補助金などを含む児童保護費等補助金506億円などが盛り込まれています。
 さらに「改革案」は、補助負担金廃止とあわせて、国の必置規制、基準の義務付けの廃止を求めています。その具体例として、(1)認可保育所調理室の必置規制や、(2)公立保育所運営費が一般財源化されても見直しがされない「保育士の数」や「乳児室の面積」基準をあげています。そのうえ、「保育に欠ける」という入所要件の見直しも求めています。これらは児童福祉法を根底から切り崩すものに他なりません。
 地方6団体は、補助負担金の廃止と引きかえに同等の税源移譲を求めていますが、財務省は地方が求める税源移譲に否定的なだけでなく、地方交付税交付金の総額抑制さえ求めています。実際に2004年度予算における1兆円の補助金削減に対する税源移譲等は6500億円に止まり、あわせて地方交付税交付金も大幅に削減され、地方自治体の財政状況を逼迫させたことを考えれば、国が本気で税源移譲を実施するとは思われません。地方6団体の「改革案」を口実に、補助負担金の廃止だけがすすめられる危険性があります。
 日本の保育所は、(1)自治体の保育実施義務、(2)最低基準の遵守義務、(3)最低基準に基づく国・自治体の財政負担義務、を法的に位置づけ、保育のナショナルミニマムを維持してきました。国の財政負担義務をなくす国庫補助負担金の廃止(一般財源化)は、現行保育制度を大きく揺るがすものです。国庫補助負担金が廃止されれば、「保育単価」に代表される保育所運営費の支出の基準がなくなり、保育のナショナルミニマムがあいまいにされることになります。自治体の財政力、保育施策に対する姿勢などによって、子どもの処遇(保育内容、保育条件)に大きな格差が生じることは明かです。
 かりに充分な税源移譲や、地方交付税交付金に必要な保育費用の積算があったとしても、その使い道は自治体にまかされます。現実に、財政難を抱える地方自治体が多いことを考えれば、それが保育事業に使われる保障はありません。財務省の要求どおり、税源移譲が充分にされず、地方交付税交付金が減額されるようなことがあれば、事態はさらに深刻になります。
 保育を受ける権利は、すべての子どもに平等に保障されるべきであり、保育のナショナルミニマムは国が責任をもって財源保障すべきです。地方の独自性や自治体裁量は、ナショナルミニマムを保障した上に考えられるべきであり、今でさえ貧しい最低基準の廃止によって地方の自由度を拡大するなどは本末転倒です。したがって、国の関与・規制の見直し、最低基準の廃止、切り下げを求める地方6団体の「改革案」は到底容認できません。
 昨年末に公立保育所運営費の一般財源化が決定した際、官房長官、総務大臣、財務大臣、厚生労働大臣、自民党政調会長及び公明党政調会長の6者の間で「民間保育所運営費の国庫負担については今後も引き続き国が責任をもつ」ことが合意されています。短期間にこれを反故にすることは、国民に対する公約違反です。国と地方の財政破綻は、公共事業を優先させてきた国の責任であり、そのツケを地方自治体や国民、子どもに押しつけることは絶対に許されません。
 少子化のなかで増大する保育要求に応えるためには、国と自治体が責任を持つ現行保育制度を堅持・拡充することが必要です。私たちは国に対し、保育所運営費・施設整備費など保育予算を一般財源化せず、大幅増額することを求めます。あわせて保育の実施義務を持つ自治体に対し、国への予算要求と自治体の予算確保、施策の拡充の声を強めていきます。
 国は2005年度より各自治体、企業に次世代育成支援の行動計画の策定・実施を義務付けました。次世代育成支援にふさわしい予算措置と具体的な施策の拡充が必要であるこの時期に、保育のみならず、幼稚園、学童保育、義務教育、私学助成など子どもにかかわる国庫補助負担金の廃止をすすめることは、国民のねがいに逆行するものです。真の次世代育成支援施策の実行、保育・子育て支援施策の拡充は、国の最優先の課題です。
 私たちは、子どもの幸せをねがう多くの人たちとともに、子どもの最善の利益を求める運動を大きく広げていくことを決意するものです。

2004年9月2日
全国保育団体連絡会


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