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【05.02.23】〔見解〕いわゆる「幼保総合施設」について

2004年5月23日
全国保育団体連絡会

1.
 2003年6月、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(骨太方針第3弾)の「国庫補助負担金整理合理化方針」のなかで「新しい児童育成のための体制の整備」として「就学前の教育・保育を一体として捉えた一環した総合施設」(以下、総合施設)の設置を可能とすることが突如提案されました。
 そのねらいは、「三位一体改革」による保育所運営費の削減を合理化することにあります。それは、その後に出された総合規制改革会議の中間答申(2003年7月)において「『総合施設』については、その施設設備、職員資格、職員配置、幼児受入などに関する規制の水準を、それぞれ現行の幼稚園と保育所に関する規制のどちらか緩い方の水準以下とすべきである」とし、本来、改善が課題であるべき保育条件の切り下げを示唆したことからも明らかであり、「総合施設」は今後の検討次第で公的保育制度の解体に道を開く危険性があるといえます。
 私たちは、子どもの発達保障よりも経済効率、財政削減を目的にし、現行の保育・教育制度を切り崩すような「総合施設」の検討、設置を認めることはできません。

2.
 保育所と幼稚園はこれまで独自の機能と役割をもち、それぞれ地域の要求にこたえながら発展してきました。しかし、保育・子育てをとりまく社会状況が大きく変化するなかで、保育所・幼稚園に対する期待はよりいっそう大きくなっています。
 いま、都市部では少子化で子どもが減っているにもかかわらず待機児童があふれ、この解消のために、幼稚園の預かり保育などが安上がりに活用されています。一方で過疎がすすむ町村では、保育所と幼稚園それぞれの定員割れがすすみ、自治体の財政難から既存の施設を維持することが困難になっており、保育所と幼稚園のそれぞれの機能を維持しつつ、これを「一体化」して運営する方向が模索されています。そして、待機児童があふれる都市部においても、過疎がすすむ町村においても、就学前の子どもたちを保育所と幼稚園に二分するのではなく、どの子どもにも平等にその子どもが必要とする保育・教育の機会を保障してほしい、という国民の願いがあることも否定できません。
 保育・幼児教育制度の検討をすすめるのであれば、こうした実態をふまえ、これまでの制度をさらに発展させるものでなくてはならないと考えます。

3.
 これまで厚生労働省と文部科学省は、社会保障審議会と中央教育審議会において「総合施設」の機能、役割、施設設備、利用のあり方、財源などについての検討を重ねてきました。今後はまとめに向けて両者合同でさらに検討がすすめられることになっていますが、検討にあたっては次のような視点が必要と考えます。
 第一に、これまでの議論のなかで次世代育成支援政策との関連で、「すべての子ども」を対象にすることが課題にあげられていますが、このことを理由に「保育に欠ける」子どもの保育保障がないがしろにされることがあってはならないと考えます。これは「総合施設」が提案された大きな理由が待機児童対策にあることからも明らかです。「総合施設」の検討にあたっては、少なくとも現行保育所制度の柱である、児童福祉法24条を基本とし、自治体の保育実施義務、最低基準の遵守義務、公費負担義務を最低限の土台にしての議論が必要です。「すべての子ども」を対象にするとしても、そのなかに「保育に欠ける」子どもが含まれる以上、これらの基準は維持さえるべきだと考えます。
 さらに「総合施設」がそれぞれの機能を併せ持つ施設であるならば、機能拡充にふさわしい条件整備が必要になります。このことは 、現在各地ですすめられようとしている「幼保一体化施設」のあり方について考える際の視点でもあります。
第二に、待機児解消や、子育て支援など、保育・子育て問題の課題の解消のためには、保育所、幼稚園、その他子どもにかかわる多様な施策の拡充こそが必要です。「総合施設」の創設で地域の子育てニーズのすべてを満たしていくことは現実的には不可能であるといえます。とりわけ待機児童対策については、認可保育所の新設・増設を中心とした保育所整備計画を緊急に立て、予算化することが求められています。
 ところが経済財政諮問会議の「基本方針」や、総合規制改革会議の「答申」のなかでは、保育・福祉改革の課題として「幼保一元化」「総合施設」のみが取り上げられています。保育・子育て問題を「総合施設」創設を前提にした議論のみに矮小化せず、これまでの保育・子育て施策の評価と課題をふまえたうえでの制度・政策論議をすすめる必要があります。

4.
 進行する少子化と高まる保育要求のもとで、保育行政のあり方が問われています。いま、必要なのは、子どもと働く父母の立場に立った待機児童対策であり、児童福祉施設最低基準の抜本的改善、そしてすべての子どもの健やかな育ちを保障する子育て支援事業の拡充、これらを保障する保育・子育て予算の大幅増額と施策の拡充です。
 今年は、子どもの権利条約を日本政府が批准して10周年にあたります。私たちは政府に対し、子どもの権利条約の批准国として、経済効率優先でなく、幼い子どもに最善を保障する政策への転換を強く求めると同時に、子どもの権利が最大限尊重される保育・子育ての公的保障のいっそうの拡充を求める運動を大きく広げていくことを決意するものです。


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